「失業保険ってもらえるのは3ヶ月程度でしょ?」と思ってる人は多いかもしれません。
確かに自己都合退職の所定給付日数は90日~150日となっており、最大でも約5ヶ月しかもらえません。
しかし条件を満たせば300日、最大で360日もらう方法があるんです。
それが就職困難者に該当すること。
障害者で就職が困難な人のための制度ですが、うつ病などメンタルの不調での退職も対象になります。
3~5ヶ月の失業保険が10~12ヶ月に伸びるのですから、対象者なら利用した方がいいでしょう。

というわけで、失業保険の就職困難者に該当するための条件や申請方法を解説します。
目次
就職困難者とは?そのメリット
就職困難者について説明する前に、まず失業保険の基本を知っておきましょう。
失業保険(正式には「基本手当」)は、離職後に次の仕事が決まるまでの生活の支えとして支給されるものです。
原則として「働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしている人」が対象となります。
給付日数は退職理由や年齢、雇用保険の加入年数によって異なります。
たとえば自己都合退職の給付日数は次のようになっており、最大でも150日しか支給されません。
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|
全年齢 | ― | 90日 | 120日 | 150日 |
参考:基本手当の所定給付日数 - ハローワークインターネットサービス
会社都合退職だと給付日数は次のようになっています。
該当するのは「特定受給資格者」と「雇い止めで退職した特定理由離職者」です。
関連記事特定受給資格者・特定理由離職者とは?自己都合を会社都合退職にする方法
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
参考:基本手当の所定給付日数 - ハローワークインターネットサービス
ただ、これよりも長く支給される区分があります。
それが就職困難者です。
就職困難者とは、障害者など再就職にあたり特別な配慮が必要な人を指します。
こうした困難を抱える人が就職活動する際の優遇措置として、所定給付日数が通常より長く設定されているのです。
就職困難者には「失業給付日数の増加」「求職活動実績の軽減」「常用就職支度手当の支給」という3つのメリットがあります。
失業給付日数の増加
就職困難者は雇用保険加入期間が1年以上あれば、45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日の給付日数が付与されます。
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上 |
---|---|---|
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
給付日数は会社都合退職と比べても非常に多いです。
最大360日(約1年間)も給付されるから、たっぷり就職活動の時間が取れます。
また、1ヶ月(もしくは3ヶ月)の給付制限期間もありませんので、退職後すぐに失業保険を受給することができます。
求職活動実績の軽減
就職困難者は失業保険受給の条件となる求職活動の回数が減ります。
一般の離職者は認定日までに2回以上の求職活動実績(面接を受けるなど)が必要ですが、就職困難者は1回で済みます。
必要な求職活動実績
- 一般の離職者・・・2回以上
- 就職困難者・・・1回でOK
就職活動の負担軽減のため、就職困難者にはこのような優遇措置が設けられているのです。
関連記事5分でできる!求職活動実績の簡単な作り方【ハロワの求人検索はNG】
常用就職支度手当の支給
一般の離職者は早期に就職した際、再就職手当を受け取れます。
しかし就職困難者はなかなか早期に就職できず、手当の支給期限が過ぎてしまう人もいます。
そのため就職困難者が就職した際は、再就職手当よりも条件の緩い常用就職支度手当が支給対象になります。
再就職手当の要件から外れたときは、この常用就職支度手当が支給されます。
就職困難者に該当する条件
就職困難者に該当するのは以下のような方です。
就職困難者の該当条件
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 刑法等の規定により保護観察に付された方
- 社会的事情により就職が著しく阻害されている方
1~3は原則として受給資格決定時に身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所持している方が対象です。
ただし3の精神障害者のうち統合失調症、躁うつ病(そう病・うつ病を含む)、てんかんは手帳を所持していなくても医師の診断書で認定されることがあります。
そのため、うつ病でも認定される可能性があるのです。
また、失業保険の受給には「心身ともに働ける状態であり、積極的に求職活動をしていること」という条件があります。
うつ病の症状が重くて働けない状態では、失業保険は受給できません。
そんなときは傷病手当金を受給するなどして、療養に専念しましょう。
関連記事【うつ病などの休職でもらえる】傷病手当金の受給条件・金額・申請方法まとめ
その際、失業保険の受給期間(1年間)を最長4年間まで延長できる制度もあります。
完治した後に失業保険を受給できるよう、延長手続きを忘れないようにしましょう。
関連記事失業保険の受給期間延長手続き(病気・妊娠・出産などで働けないとき)
診断書作成のポイント
就職困難者と認定されるには「働けること」が大前提です。
つまり「離職時は働けなかった」「しかし現在は就労が可能」「とはいえ就職活動には配慮が必要」という3つの状態である必要があります。
就職困難者の認定条件
- 離職時は働けなかった
- しかし現在は就労が可能
- とはいえ就職活動には配慮が必要
この状態を医師の診断書で証明する必要があります。
現在の状態を医師に説明し、病状に沿った診断書を書いてもらいましょう。
ただしうつ病は初診ですぐ診断されるものではありません。診断に数ヶ月かかる場合もあります。
初診でいきなり診断書を書いてもらおうと思っても無理なので、退職前の早いうちから受診しておくようにしましょう。
就職困難者の手続き方法
就職困難者として失業保険を受給するには、次の流れで進めていきます。
就職困難者の受給の流れ
- うつ病との診断を受ける
- 会社を退職する
- ハローワークへ相談する(就労可能証明書を受け取る)
- 病院で診断書・就労可能証明書を書いてもらう
- ハローワークで求職申込みをする
就職困難者の手続きは管轄のハローワークごとに若干異なります。
そのため対象になりそうな人は、あらかじめハローワークに問い合わせをしておくのがいいでしょう。
必要書類や手続き方法はその際に案内されるはずです。
就職困難者として認定されるには、ハローワークで求職申込みをする前の準備が大切です。
多くの場合は先にハローワークで就労可能証明書の原本をもらい、それを病院に持って行って医師に記入してもらう形になります。
同時に診断書を受け取るわけですが、「離職時は働けなかった」「しかし現在は就労が可能」「とはいえ就職活動には配慮が必要」という3つの状態を書いてもらいましょう。
そして就労可能証明書・診断書を持参の上、ハローワークで求職申込みを行います。
求職申込み時の必要書類
- 離職票1と2
- 失業保険振り込み先の通帳
- 運転免許証などの本人確認書類
- マイナンバーカードなど個人番号確認書類
- 写真(縦3cm×横2.4cm)2枚
- 診断書・就労可能証明書
失業保険受給の流れは↓こちらの記事を参考にしてください。
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失業保険の受給が始まったら、体調を見ながらできる範囲で就職活動を行いましょう。
うつ病には波があり、調子の良いときもあれば悪いときもあります。
「もう治ったから大丈夫」と自己判断せず、医師の指導を受けながら活動することが大事です。
無理をしないで体を第一に考えつつ、より良い再就職先を見つけてくださいね。