会社を辞めたときの貴重な収入源となる失業保険。
失業保険の受給期間は原則、退職日の翌日から1年間です。
しかし、やむを得ない理由ですぐに失業保険を申請しない人もいるでしょう。
「病気を治してから就職活動したい」
「育児がひと段落するまでは就職しないつもり」
「介護でしばらくは仕事ができない」
そんなふうに病気・ケガ・妊娠・出産・育児・介護などで働けないときは、失業保険の受給期間を最大3年間(本来の受給期間と合わせて4年間)延長することができます。
退職後にすぐに働けないのなら、ハローワークで失業保険の受給期間を延長する手続きをしておきましょう。
「どういう人が延長できるのか」「いつまで延長できるのか」など、失業保険の受給期間延長について条件・対象者・申請方法を解説しますね。
↓今回の内容は動画でも解説しています。
失業保険の受給期間延長手続きとは
失業保険は会社を辞めたら誰でも受け取れるわけではありません。
失業保険を受給できるのは「失業の状態にある人」が大前提です。
「失業の状態」とは「就職する意志と就職できる能力があり、積極的に仕事を探しているのに就職できない状態」のことです。
そのため、病気・妊娠・出産・介護などで、今現在働けない人は失業保険を受給できません。
でも働ける状態になったときには、失業保険を受給できます。
そのためには失業保険の受給期間を先延ばしにしておく必要があるんです。
勘違いしないでほしいのは、受給期間が先延ばしになるだけで、もらえる期間が延びるわけではないということです。
受給期間が延びて失業保険の総額が増えるわけではありません。
受給期間を延ばして失業保険の総額を増やせるのは、非常に対象者が限られています。
もし就職がなかなか決まらず受給期間を延ばしたいのなら、個別延長給付や地域延長給付という制度があるので、↓こちらを参考にしてください。
関連記事平成29年廃止の個別延長給付、新設された地域延長給付を解説
対象者
失業保険の受給期間を延長できるのは、病気・ケガ・妊娠・出産・介護などで30日以上働けない場合です。
以下の理由で30日以上働けない人は、失業保険受給期間の延長申請(先延ばし)ができます。
失業保険を延長できる条件
- 病気・ケガ
- 妊娠
- 出産
- 育児(3歳未満)
- 親族等の介護(6親等以内の血族、配偶者および3親等以内の姻族)
- 配偶者の海外勤務に同行する場合
- 青年海外協力隊などの海外派遣や、一定のボランティア活動で就業できない場合
働けない期間が30日未満の場合は、失業保険の代わりに傷病手当を受給できます。
また、14日以内の短い病気やケガの場合は、ハローワークで失業認定日を変更するだけでOKです。
働けない期間が30日未満で短いときは、↓こちらに手続きをまとめてあるので参考にしてください。
関連記事失業保険受給中に病気やケガでハローワークへ行けない時の手続き
延長できる期間
失業保険の受給期間を延長できるのは3年間です。本来の受給期間(1年間)と合わせて最長4年まで延長することができます。
気をつけておきたいのは、延長の期間満了日を過ぎれば失業保険はもらえなくなる点です。
たとえば失業保険(基本手当)の給付日数が180日あったとして、延長期間満了まであと150日しかなければ、はみ出した30日分の基本手当は消えてしまいます。
なので、働けるようになったら「この日から失業保険を受給します」という解除の手続きをしてください。解除の手続きについては後ほど説明します。
なお、失業保険をもらわない期間は、家族の健康保険の扶養に入ることができます。
扶養に入れば健康保険料を払わずに済むので、働けない期間の節約手段として活用しましょう。
受給期間延長の申請方法
失業保険の受給期間延長手続きは、病気・ケガ・妊娠・出産・介護などで引き続き30日以上働けなくなった日の翌日から申請することができます。
これらの理由で退職した場合は、「退職から30日後以降」ということですね。
延長手続きの申請期限は、延長後の受給期間満了日までです。
以前は申請期限が「30日以上働けなくなった日の翌日から1ヶ月以内」だったのですが、平成29年4月の改正で延長期間終了までの間ならいつでも申請できるようになりました。
必要書類
受給期間延長手続きに必要な書類は以下の通りです。
必要書類
- 受給期間延長申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 延長理由に該当することを確認できる書類
1の受給期間延長申請書はハローワークで受け取るか、郵送で取り寄せることもできます。
受給期間延長申請書には「働くことのできない期間」を記入する欄がありますが、いつまで休むか決まっていないなら空欄でも構いません。期間は後から変更もできます。
3の「延長理由に該当することを確認できる書類」は、病気・ケガの場合は医師の診断書、妊娠・出産の場合は母子手帳などになります。
申請はハローワークで行いますが、入院などで行けないときは委任状があれば代理人が申請することも可能です。また、郵送で提出することもできます。
再び失業保険を受給するには
働ける状態になり就職活動を再開するときは、ハローワークで延長を解除する手続きを行いましょう。これを「解除の手続き」と言います。
延長手続きの際に受け取った「受給期間延長通知書」を持参し、再び失業保険を受給する手続きをします。
解除には医師の診断書など「延長理由が終わったことを証明できる書類」が必要です。
解除ができたら、失業保険の受給とともに就職活動の再開です。
失業保険の受給手続きをせずに延長した人は、ハローワークで求職申込みをすることからスタートします。
失業保険を受給する流れについては、↓こちらでまとめてあるので参考にしてください。
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60歳以上の定年退職者が延長するとき
失業保険の受給期間を延長できるのは、病気・妊娠・出産など「やむを得ない理由で働けない人」のほかに、60歳以上の定年退職者も該当します。
60歳以上65歳未満の定年退職者や、定年後の継続雇用満了により退職した人は、申請すれば最長1年間は受給期間を延長することができます。
本来の受給期間(1年間)と合わせて2年まで受給期間を延長できるわけです。
これまで長い勤務をしてきた分、次の就職まではのんびりすることができるんですね。
ただし延長申請の期限は退職日の翌日から2ヶ月以内となっているので、早めに申請するようにしましょう。
定年退職者の延長申請については、通常の延長申請と条件が異なるので注意してくださいね。