会社員なら税金関係のことはすべて年末調整で処理されますが、無職は自分で処理しないといけません。
そこで頭を悩ますのが確定申告。「どうしたらいいのか、さっぱりわからない」という人も多いのではないでしょうか。
「面倒だからいいや」ではダメですよ。そもそも納税は国民の義務ですし、何より無職にとって確定申告は払いすぎた税金を取り戻すチャンスです。
会社を退職して年末調整を受けていないのであれば、ほとんどの人は確定申告で税金が戻ってきます。
というわけで、無職の確定申告のやり方をどこよりも分かりやすく解説しますね。
「そもそも確定申告って必要なの?」という初歩的な疑問から、実際の申告書類の作り方まで。
失業中の人やニートの人、現在働いていない人は、これを見れば誰でも簡単に確定申告できるようになります。
2024年(令和6年)中に行う確定申告に対応した内容です。
↓今回の内容は動画でも解説しています。
目次
確定申告が必要な人、不要な人
まずは、あなたが確定申告が「必要な人」か「不要な人」かを確認しましょう。
確定申告が必要か必要ないかは、次のフローチャートを見てください。
昨年末に会社で年末調整を受けている人は、確定申告の必要はありません。
年末調整を受けていなくても昨年の給与所得の合計が48万円以下であれば、基礎控除の範囲内なので確定申告は不要です。
注意
基礎控除は2020年分から「38万円→48万円」に増額されました(所得2,400万円以下の人が対象)。
また、昨年1年間ずっと無収入の人も確定申告の必要はありません。
ただし、給与以外に20万円を超える収入がある人は、雑所得として確定申告する必要があります。
ほかにも家賃収入(不動産所得)や株の売買益(譲渡所得)などがある人も確定申告が必要です。
つまり、確定申告が必要な人はこうなります。
ポイント
確定申告が必要なのは
昨年末に年末調整を受けておらず、給与所得の合計が48万円(給与以外の所得が20万円)を超える人
とはいえ年末調整を受けていないなら、収入の金額にかかわらず確定申告した方がメリットはあります。
昨年に退職して年末調整を受けてない人は、確定申告することで在職中に払いすぎた税金が戻ってくるからです。
後ほど話しますが、無職の人のほとんどは還付申告を目的に確定申告することになると思います。
ポイント
無職の人のほとんどは「還付申告」を目的に確定申告する
また、1年間無収入の人でも確定申告しておいた方がメリットがあります。
昨年の所得を申告しておけば、低所得者向けの行政サービスを受けるときの証明になるからです。
確定申告をしていないと住民税が確定できず、住民税非課税世帯に向けた行政サービスから漏れる可能性が出てきます。
関連記事住民税非課税世帯のメリット:年収や条件をわかりやすく解説
行政サービスを受けるためにも、もし確定申告しないのなら住民税の申告だけは忘れずにしておきましょう。
住民税の申告は各市町村役場でできます。やり方は↓こちらをご覧ください。
関連記事無職・無収入の人は住民税の申告をしよう!市民税申告書の書き方
まとめ
確定申告が必要か必要でないか・・・
- 昨年末に年末調整を受けた → 確定申告の必要なし
- 昨年末に年末調整を受けておらず収入もなかった → 確定申告の必要なし(ただし住民税の申告はしておいた方がよい)
- 昨年末に年末調整を受けてないが収入はあった → 確定申告したら税金が戻ってくる可能性あり
なぜ確定申告で税金が戻ってくるのか?
昨年に会社を退職して年末調整を受けてない人は、確定申告するとたいてい払いすぎた税金が戻ってきます。
会社員の給料は、おおよその見込み額を元にして毎月所得税が源泉徴収されています。
退職したら実際の収入が減るので、会社員時代に見込み額で納めた税金は「払いすぎ」になるんですね。
この「払いすぎた税金」を取り戻すのが、還付申告です。
具体的には、退職時にもらった源泉徴収票の「源泉徴収税額」から税金が戻ってきます。
さらに「配偶者控除」「医療費控除」「住宅ローン控除」など、該当する人は控除を足していけば、戻ってくる税金が増えるわけです。
無職の人なら国民年金と国民健康保険には入ってるはずなので、「社会保険料控除」を受けるだけでも支払った保険料の分だけ税金が返ってきます。
確定申告の時期
確定申告の時期は毎年2月16日~3月15日です(土日を挟むと前後します)。
前年の収入に対しての確定申告をこの期間に行います。
退職した会社で年末調整を受けていない(前年末の時点で働いていない)のなら、この間に確定申告をしてください。
確定申告をし忘れた、期限が過ぎていたという人も、5年以内なら期限後申告ができます。
還付申告だけなら期限を過ぎていても延滞税等はかかりません。過去に払った税金が戻ってくるので、最寄りの税務署で行いましょう。
確定申告のやり方・手順を分かりやすく解説!
確定申告と聞くと難しそうですが、ネットでやると簡単にできてしまいます。
ネットで必要書類を作って、あとは税務署に提出するだけです。
電子申告(e-Tax)もありますが、カードリーダーやマイナンバーカードが必要だったりややこしいので、プリントアウトして税務署に持っていくか郵送した方が楽でしょう。
では、一緒に書類を作っていきましょう。手元には退職時にもらった源泉徴収票を用意してください。
ここでは、2024年(令和6年)に行う確定申告について解説していきます。
つまり、2023年分(令和5年分)の所得に対する申告書類を作っていくわけです。
対象となるのは「昨年は働いていたけど、現在は無職」という人です。昨年末に会社で年末調整を行っていない人が対象です。
書類の作り方
まずは国税庁 所得税の確定申告から、「令和5年分 確定申告特集」に入ってください。
「令和5年分 確定申告特集」に入ったら、右側の「確定申告書等作成コーナー」を押します。
「国税庁 確定申告書等作成コーナー」が開くので、「申告書等を作成する」の「作成開始」を押します。
「税務署への提出方法の選択」は「印刷して提出」を選びます。
事前準備でプリンタの動作確認をし、利用規約に同意したら、「令和5年分の申告書等の作成」から「所得税」を選びます。
「次へ進む」ボタンを押します。
次の画面で生年月日を入力し、「申告内容に関する質問」に回答してください。
退職した会社で年末調整を受けておらず、退職後に働いていないのであれば、回答は次のようになります。
申告内容に関する質問
- 給与以外に申告する収入はありますか?→いいえ
- お持ちの源泉徴収票は1枚のみですか?→はい
- 勤務先で年末調整が済んでいますか?→いいえ
- 税務署から予定納税額の通知を受けていますか?→いいえ
質問の回答が済んだら「収入金額・所得金額の入力」に移ります。
ここでは「給与所得」を入力していきます。
給与所得は退職時にもらった(もしくはバイト先からもらった)源泉徴収票を見ながら入力します。
「書面で交付された年末調整済みでない源泉徴収票の入力」で「入力する」をクリックしてください。
「給与所得の入力」の画面は、源泉徴収票のどこを見ればいいか一目でわかるようになっているので簡単です。源泉徴収票の通りに入力してください。
アルバイト等で他の会社でも働いていたのなら「続けてもう1件入力」で別の源泉徴収票を入力します。
なければ「入力内容の確認」から「次へ進む」で進みます。
給与所得が入力されたのを確認の上、「入力終了(次へ)」を押します。
次に「所得控除の入力」に移ります。
多くの人に該当する控除としては社会保険料控除があります。国民健康保険や国民年金を支払っているなら、社会保険料控除が受けられます。
ここでは会社を辞めてから払った国民年金と国民健康保険料を入力します。
すでに源泉徴収票に記載されていた社会保険料控除にプラスするので、「訂正・内容確認」を押してください。
社会保険料控除の入力の画面で、源泉徴収票に記載のない社会保険料について「入力する」ボタンを押してください。
ここで国民年金と国民健康保険の金額を入力します。
国民年金は郵送で送られてきた「社会保険料控除証明書」に記載された額を入力します。
国民健康保険は証明書が送られてこないので、振り込みの控えや引き落としの通帳を元に、合計額を計算します。
ほかにも保険料がある場合は、ここで入力してください。
全部入力したら保険料を確認し、次へ進みます。
「所得控除の入力」の画面に戻りますので、他にも控除があるなら、ここで入力してください。
主な控除はこんな感じです。
主な控除
- 一年間で医療費を10万円以上支払った → 医療費控除
- 生命保険料や個人年金保険料を支払った → 生命保険料控除
- ふるさと納税をした→寄付金控除
- 対象となる配偶者がいる → 配偶者控除
- 対象となる扶養親族がいる → 扶養控除
医療費控除では医薬品の購入が対象になるセルフメディケーション税制も使えます。
病院や薬の購入が多い人は、普段から領収書やレシートをこまめに取っておきましょう。
関連記事医薬品購入で税金が戻る!セルフメディケーション税制の使い方
「入力終了(次へ)」を押すと「税額控除・その他の項目の入力」に移ります。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)はここで入力します。
該当者は少ないと思いますが、該当するものがあれば入力してください。
「入力終了(次へ)」を押すと計算結果が表示されるので、還付される税金を確認して次に進みます。
次の「財産債務調書、住民税等入力」は「住民税・事業税に関する事項」に該当する人のみ入力してください。
該当しない人はそのまま進んでOKです。
あとは「住所・氏名等入力」の画面で、還付される税金の振込先を入力し、住所や名前の入力をしていきます。
マイナンバーも入力します。
「申告書等印刷」の画面では、すべての帳票を選択し、「帳票表示・印刷」ボタンを押します。
PDFで保存されるので、PDFを開いて出来上がった申告書をプリントアウトしてください。
プリントアウトしたら、添付書類と一緒に税務署に提出すれば、確定申告完了です。
控用の帳票は保管しておきましょう。
提出のしかた
税務署に提出する書類は以下の通りです。
本人確認書類と各種控除証明書は、確定申告書の添付書類台紙にのりづけして提出します。
提出書類
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 各種控除証明書
源泉徴収票は提出しなくて構いません。
本人確認書類にはマイナンバーカード、もしくは通知カードと指定の身元確認書類のコピーを添付しましょう。
身元確認書類には以下のものが使えます。
身元確認書類
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
郵送の場合は管轄の税務署へ郵送します。
管轄の税務署がどこかは下記のページで調べることができます。
送るときは「郵便物」(第一種郵便物)または「信書便物」で送るという規則がありますが、よく分からなければ普通郵便で大丈夫です。
後日、指定した銀行口座に還付金が振り込まれますよ。お疲れ様でした~。^^
よくある質問
最後に、無職の確定申告についてよくある質問に答えます。
なお、退職後の社会保険や税金の手続きについては↓こちらでまとめてあるので、合わせて参考にしてください。
-
【退職後の社会保険・税金】失業中の年金や健康保険 得する手続きまとめ
会社を退職したら社会保険(健康保険・年金)と税金(住民税・所得税)は自分で払わないといけません。 「退職後に何をしたらいいかよく分からない」という人のために、失業したときに行う社会保険(健康保険・年金 ...
続きを見る
失業保険は申告しないといけないの?
失業保険を受給していたとしても、申告する必要はありません。
失業保険は課税対象ではないので、気にしなくても大丈夫です。
-
失業保険の手続きと受給の流れまとめ【損しないもらい方を解説】
会社を退職した後にもらえる失業保険は、無職の間の貴重な収入源です。 しかし実際にいくらもらえるのか、いつまでもらえるのかよく分かっていない人も多いのではないでしょうか。 失業保険はあくまで失業したとき ...
続きを見る
退職金は申告しないといけないの?
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が源泉徴収してくれているので、何も申告する必要はありません。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないときは、確定申告で払いすぎた税金を取り戻せるケースもあります。
退職金と税金の関係については↓こちらで詳しく解説してあります。
関連記事退職金に税金はほとんどかからない!非課税になる金額一覧
確定申告しないとどうなる?
納める税金がない人は、確定申告しなくても特に罰則はありません。
無職の人なら確定申告しないことで「税金の還付が受けられない」「低所得者向けの行政サービスが受けられない」などのデメリットがあるぐらいです。
ただし、納めるべき税金があるのに故意に確定申告しないと、無申告加算税というペナルティを課せられます。
さらに税金を支払わなかったことによる延滞税もかかってきます。
納税は国民の義務ですので、忘れず確定申告するようにしましょう。