失業時の生活の糧となる失業保険。少しでも多くもらいたいのが本音ですよね。
では、失業保険の金額を増やす方法はあるのでしょうか?
結論から言うと、退職前の半年間の残業を増やせば失業保険は増えます。
失業保険(失業手当)の金額が決まる仕組みを見ながら、失業保険を増やす方法を解説しますね。
↓今回の内容は動画でも解説しています。
目次
失業保険の金額が決まる仕組み
まずは失業保険(失業手当)の金額が決まる仕組みを知っておきましょう。
失業保険の金額の基準となるのが賃金日額です。賃金日額は退職する直前の6ヶ月間に支払われた賃金を180で割って計算します。
賃金日額の計算方法
賃金日額=退職直前の6ヶ月間に支払われた賃金の総額÷180
つまり、「1日当たりに支払われる賃金の額」ですね。
賃金日額にはボーナスや退職金は含まれませんが、家族手当や住宅手当などの各種手当は含まれます。また、通勤手当(交通費)も含まれます。
賃金日額に含まれるもの | 賃金日額に含まれないもの |
---|---|
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この賃金日額の50~80%(60~64歳は45~80%)が、一日に支払われる失業保険の金額(基本手当日額)です。
基本手当日額に所定給付日数をかけたものが、トータルでもらえる失業保険の総額になります。
失業保険の総額の計算方法
もらえる失業保険の総額=賃金日額×50~80%(60~64歳は45~80%)×所定給付日数
このように、失業保険は退職前の6ヶ月間の給料を元に計算されています。
なので、退職前の6ヶ月間に残業をするなどして給料を増やせば、もらえる失業保険は増えます。
積極的に残業して残業代を増やしておけば、失業保険の金額も増えるんですね。
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残業を増やせばどれだけ失業保険が増えるのか
では、どれだけ残業代を増やせば、いくら失業保険が増えるのかを見ていきましょう。
たとえば退職前の半年間で、毎月40時間残業したとしましょう。
残業手当が1時間あたり1,800円だとすると、月の残業代は7万2,000円。
賃金日額を残業代のみで計算すると2,400円になります。
失業保険の給付率が60%とすると、残業代のみの基本手当日額は1,440円になります。
残業代のみの賃金日額
<月の残業代>1,800円×30日=7万2,000円
<残業代のみの賃金日額>7万2,000円×6ヶ月÷180=2,400円
<残業代のみの基本手当日額>2,400円×60%=1,440円
この基本手当日額に所定給付日数をかけたものが、もらえる失業保険の総額になります。
たとえば所定給付日数が120日だとすると、残業代に該当する失業保険は17万2,800円にもなります。
残業で増える失業保険
<増える失業保険の総額>1,440円×120日=17万2,800円
つまり、毎月40時間の残業をすることで失業保険の総額が17万円以上も増えるのです。
残業代を増やすだけで、失業保険を数万~数十万円増やすことが可能なんですね。
残業手当以外にも、休日手当がある人は休日出勤を増やすことで、失業保険を増やすことができます。
一般的に会社を辞めるときは仕事も少なくなり、残業をしなくなる人が多いでしょう。
有給消化で出社しなくなる人も多いと思います。
しかし失業保険を増やしたいのであれば、積極的に残業した方がいいのです。
退職まで半年を切ってからは、なるべく残業して残業代を稼ぐことを意識してみましょう。
失業保険を増やす別の方法
失業保険を増やすには、残業代を増やす以外にも方法があります。
どれも裏技ではなく、きちんと制度にのっとった正攻法です。
実践できる対象者は限られますが、退職するときには「こういう方法もあるんだ」と知っておくといいでしょう。
退職日を先に延ばす
失業保険は年齢と雇用保険の加入期間に応じて、所定給付日数が変わります。
雇用保険の加入期間とは、基本的には在職期間のことですね。
つまり、年齢が高く在職期間が長いほど、失業保険を長くもらえます。
失業保険の所定給付日数は以下の通りです。
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|
全年齢 | ― | 90日 | 120日 | 150日 |
雇用保険加入期間 /退職時の年齢 |
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
参考:基本手当の所定給付日数 - ハローワークインターネットサービス
なので、「あと少しで所定給付日数が増える」というのであれば、在籍期間を延ばした方がいいでしょう。
たとえば在職期間が9年10ヶ月であれば、あと2ヶ月だけ頑張って10年にすれば、所定給付日数が30日か60日増えます。
自分の年齢と在職期間を考慮した上で、退職日を決定したいですね。
退職理由を会社都合にする
会社を辞めるときの退職理由には「自己都合」と「会社都合」があります。
「自己都合」は自分の意志で辞めた人で、「会社都合」は倒産や解雇など自分の意志に反して辞めさせられた人です。
そして先ほどの表のように、失業保険の所定給付日数は「会社都合退職」の方が長く設定されています。
なので、自己都合よりも会社都合で退職した方が、失業保険の総支給額は多くなるのです。
とはいえ、「退職理由を変えるなんてできないでしょ」と思われるでしょう。
しかし、きちんとした理由があれば自己都合退職を会社都合退職に変えることは可能です。
会社都合での退職者を「特定受給資格者」と言いますが、たとえば残業時間が基準を超えていたり、セクハラ・パワハラが理由で辞めた場合は特定受給資格者に該当します。
たとえ会社が自己都合退職で処理したとしても、ハローワークに訴えれば退職理由を書き換えてもらえます。
これで所定給付日数が延び、失業保険の受給総額が増えるんですね。
自己都合退職を会社都合退職に変える方法は、↓こちらで解説してるので参考にしてください。
関連記事特定受給資格者・特定理由離職者とは?自己都合を会社都合退職にする方法
公共職業訓練を受ける
公共職業訓練とは、就職に必要な技能や知識を身につけることを目的として、国や都道府県が実施している職業訓練です。
公共職業訓練を受ければ、訓練が終わるまで失業保険の受給が可能になります。
たとえば6ヶ月の訓練を受けると、所定給付日数が90日の人であっても180日間失業保険がもらえるんですね。
しかも自己都合退職の場合の給付制限期間(2ヶ月または3ヶ月)が免除されますし、受講中は「受講手当」や「通所手当」(公共職業訓練施設への交通費)がもらえます。
就職に必要な訓練を受けられて、手当までもらえるという公共職業訓練。
これを受けることで、失業保険以外にももらえる手当の総額を増やせます。
個別延長給付の適用
個別延長給付の対象に当てはまれば、所定給付日数を60日ないしは120日延ばせます。
これにより失業保険の受給総額を増やせます。
ただし対象者は特定受給資格者か一定の特定理由離職者で、障害者や災害に遭った人に限られます。
また、広域延長給付と全国延長給付が適用されれば、失業保険の受給期間を延ばせることがあります。
関連記事平成29年廃止の個別延長給付、新設された地域延長給付を解説
まとめ
というわけで、失業保険を増やす方法を解説してきました。
まとめると次の通りです。
失業保険を増やす方法
- 残業手当や休日手当を増やす
- 退職日を先に延ばす
- 退職理由を会社都合にする
- 公共職業訓練を受ける
- 個別延長給付の適用
残業手当や休日手当を増やすのは、退職の半年前から意識して行いましょう。
失業保険は少しでも多い方がいいですからね。
ぜひ上手に計画を立てて実践してみてください。