老後資金を貯めるためにiDeCo(イデコ)を始める人が増えています。
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、老後のために自分で投資信託などを運用して作る「じぶん年金」のことです。
「掛金が全額所得控除になる」「運用益が非課税」といった、税制上のメリットが大きいのが特徴。
そのため、税金を節約しながら資産を増やしていけるとてもお得な年金制度なんですね。
とはいえ収入のない無職にとって、iDeCoの掛金は結構負担になります。
会社を辞めて無職になったときに、iDeCoに入っておくメリットはあるのでしょうか?
また、企業型確定拠出年金に入っていた人が退職したら、どのような手続きをすればいいのでしょうか?
無職になったらiDeCoをどうすればいいのか、その手続きや加入のメリット・デメリットを解説します。
目次
無職はiDeCoに加入できるのか?
2017年の法改正で、iDeCoは60歳未満であれば原則、誰でも加入できるようになりました。
そのため、無職でもiDeCoに加入することはできます。
ただし、iDeCoに加入するには「国民年金」の保険料を払っていることが条件です。
国民年金は20歳以上60歳未満の国民全員に加入義務があり、無職でも毎月保険料を払い続けます。
しかし収入のない無職だと、保険料が払えず未納になっていたり、保険料の免除を受けている人もいるでしょう。
このように、国民年金保険料が未納だったり免除や猶予を受けている人は、原則iDeCoには加入できません。
「じぶん年金」であるiDeCoは公的年金に上乗せする私的年金なので、iDeCoをする前にまずは国民年金を払う必要があるわけですね。
ポイント
無職でもiDeCoには加入できる。
ただし、国民年金保険料が未納だったり、免除や猶予を受けている人は加入できない。
ちなみに、過去に未納の期間があっても現在保険料を払っていれば加入できます。
関連記事失業で国民年金が払えない時の免除制度 メリットと手続き方法
掛金の上限額
iDeCoの毎月の掛金の上限額は、職業や立場によって異なります。
無職の場合、積み立てできる上限は月6万8千円までとなっています。
無職や自営業・フリーランスは年金が国民年金しかなく、公的な給付が手薄いので、iDeCoでまかなえるよう限度額が多くなっているのです。
職業・立場 | 掛金の上限 |
---|---|
自営業・フリーランス・無職 | 月6万8千円 |
企業年金のない会社の社員 | 月2万3千円 |
専業主婦 | |
企業型確定拠出年金のみある会社の社員 | 月2万円 |
公務員 | 月1万2千円 |
確定給付企業年金のある会社の社員 |
ただし、限度額には国民年金基金と付加年金の保険料も合算します。
無職だと付加年金に加入している人もいると思うので、その場合は付加年金の保険料(月400円)を差し引きましょう。
関連記事付加年金に無職は絶対入るべき!月400円で超お得な付加年金を解説
無職がiDeCoに加入するメリットはある?
無職でもiDeCoに加入できるのは分かりましたが、無職がiDeCoに加入するメリットはあるのでしょうか?
これはその人の状況や考え方によります。
iDeCoの最大のメリットは、掛金の全額が所得控除になることです。
しかし無職にはそもそも収入がないので、支払う所得税はありません。
年間給与所得103万円以下であれば所得税は0円なので、節税の点で考えるとiDeCoのメリットはほとんどないと言えるでしょう。
それに失業中は無収入の中で国民年金も払わないといけません。
国民年金の免除を受けたり滞納したりすると、iDeCoの加入資格も失ってしまいます。
なので優先順位としては国民年金を支払う方が先です。
また、iDeCoは原則60歳まで引き出せないのにも注意が必要です。
無職はいつ生活資金が枯渇してもおかしくないので、60歳まで引き出せないiDeCoより、いつでも引き出せるつみたてNISAを優先した方がいいかもしれません。
関連記事無職は投資だけで生活できるのか?無職が株やNISAを安全に始めるには
しかし老後の資金を考えると、早くiDeCoを始めるにこしたことはないです。
積み立て投資は期間が長ければ長いほど、安定性とパフォーマンスが上がります。
ゼロ金利の今では銀行に預金してもわずかな利息しかつきませんし、お金を増やしたいならできるだけ早く積み立て投資を始めた方がいいでしょう。
それにiDeCoの運用益は非課税ですし、受け取り時にも退職所得控除や公的年金控除で税金が優遇されます。
つまり、無職には拠出時の節税メリットこそないものの、運用中や受け取り時にはメリットを受けられるのです。
ポイント
■無職がiDeCoをするメリット
- 資産を有効活用して増やしていける
- 受け取り時に税優遇を受けられる
■無職がiDeCoをするデメリット
- 拠出時の所得控除を受けられない
- 60歳まで資金を引き出せない
なので、毎日の生活費でカツカツの人なら、無理してiDeCoを始める必要はありません。
国民年金を払うのと、再就職して収入を確保する方が先です。
しかし資金に余裕があり確実に再就職するのであれば、失業中にiDeCoを始めるのはアリでしょう。
できるだけ早く始めた方が、老後の資金が確実に積みあがるからです。
無職でもお金に余裕があるのなら、iDeCoの加入を検討してみてください。
iDeCoに加入するには
iDeCoに加入するには、iDeCoを取り扱う金融機関を通じて申し込みを行います。
銀行や証券会社などで申し込めますが、一番おすすめはネット証券です。
ネット証券なら取り扱い商品が豊富ですし、何より管理手数料が安いので余計なコストがかかりません。
iDeCoは長期で運用していくので、少しでもコストを抑えることがパフォーマンスの向上につながります。
中でも楽天証券とSBI証券は多くの人に選ばれているので、これからiDeCoを始めるならこの2つから選ぶといいでしょう。
楽天証券
楽天証券のiDeCoは、コスパが優れていて投資初心者でも簡単に始められるのが特徴です。
楽天証券は運営管理手数料が0円※。余計な費用をまったくかけずにiDeCoの運用ができます。(※毎月発生する費用には、別途、国民年金基金連合会や事務委託先の信託銀行で発生するものがあります)
管理画面の見やすさも特徴の一つ。他社では証券口座とiDeCoでIDが分かれているのが一般的ですが、楽天証券は1つにまとまっています。
そのため、自分のトータル資産の状況が一目で把握しやすいのです。
初心者が手掛けやすい作りになっているので、投資が初めてならこの楽天証券を選ぶといいでしょう。
SBI証券
SBI証券のiDeCoは、ネット証券大手ならではの豊富な商品ラインナップが特徴です。
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」などの信託報酬の安い投資信託のほかにも、新興国株式やリートなど投資経験者でも満足できる商品がそろっています。
初心者には無料で利用できる「SBI-iDeCoロボ」というツールがあり、投資信託選びをサポートしてくれます。
もちろん運営管理手数料は0円※。余分な費用はかかりません。(※毎月発生する費用には、別途、国民年金基金連合会や事務委託先の信託銀行で発生するものがあります)
ある程度投資の経験があるなら、このSBI証券を選ぶといいでしょう。
企業型確定拠出年金加入者が退職したときの手続き
勤め先で企業型確定拠出年金に入っていた人は、退職するとその資産を移動させる手続きが必要になります。
資産の移管先としては、次の3つの選択肢があります。
企業型確定拠出年金からの移管先
- 転職先の企業型確定拠出年金
- iDeCo
- 脱退一時金
転職先に企業型確定拠出年金があるなら、1の「転職先の企業型確定拠出年金」に入るといいでしょう。
企業型確定拠出年金がないなら、2の「iDeCoに移管」をして個人で管理していくことになります。
移管先の金融機関に申し込む際、「新規」ではなく「移管」を選択すれば手続きができます。
しばらく再就職する予定がなく、掛金を拠出するのが難しいようであれば、3の「脱退一時金」として受け取ることも選択肢の一つです。
国民年金を払えないくらい余裕がないのなら、一時金を受け取って生活費に回すのもやむを得ません。
しかし、iDeCoは長期で積み立てていくことにメリットがあるので、できれば運用は続けておいた方がいいです。
iDeCoの掛金額は年1回までなら変更できるので、最低金額の5,000円に設定しておけば月々の負担は軽くて済みます。
失業中の間だけ掛金を減らして、再就職したら掛金を増やすのでもいいと思います。
注意しておきたいのは、手続きは企業型確定拠出年金の加入資格を喪失してから6ヶ月以内にしないといけない点です。
手続きをしなかった場合、資産は国民年金基金連合会に自動移換されます。
自動移管されると、資産の運用がされず管理手数料だけ取られるという最悪な状態になってしまいます。
自動移管のデメリット
- 資産の運用がされない
- 管理手数料を取られ続ける
- 自動移管にも約4,000円の手数料がかかる
- 自動移管中は老齢給付金の加入期間に算入されないため、60歳になっても給付を受け取れない可能性がある
このように自動移管のデメリットは非常に大きいので、退職したときには必ず企業型確定拠出年金の手続きをやっておきましょう。