退職理由には「自己都合退職」と「会社都合退職」があります。
失業保険においては会社都合退職の方が有利です。
会社都合退職だと失業保険の給付日数が増えますし、給付制限(2ヶ月もしくは3ヶ月)を経ることなく退職後すぐに受給を開始できます。
しかし会社都合退職だと「転職で不利にならないか心配」という人もいるのではないでしょうか。
また、なかには会社都合退職にしたいけど会社が応じてくれない人もいるでしょう。
会社が会社都合退職にしたくない理由も気になるところです。
そこで、会社都合退職にするデメリットを企業側と労働者側の両面からまとめました。
一般的にメリットの多い会社都合退職ですが、どんなデメリットが隠れているのかを知っておきましょう。
退職理由を会社都合退職にしようとしてる人は、ぜひ参考にしてください。
↓今回の内容は動画でも解説しています。
目次
会社都合退職とは
まずは会社都合退職とは何なのかを知っておきましょう。
失業者は退職した理由によって、「一般離職者」と「特定受給資格者」「特定理由離職者」に分かれます。
この中で「特定受給資格者」と「雇い止めによる特定理由離職者」は会社都合退職として扱われます。
具体的には以下の理由で退職した人は会社都合退職になります。
会社都合退職の条件・対象者
【倒産など】
- 会社が倒産した
- 会社から大量の離職者が出た
- 事業所が廃止になった
- 事業所が移転し、通勤が困難になった
【解雇など】
- 解雇された(懲戒解雇を除く)
- 労働条件が契約と大きく違っていた
- 賃金の3分の1以上が期日までに支払われなかった
- 賃金が85%未満に低下した
- 残業時間が基準を超えていた(3ヶ月連続で45時間、1ヶ月で100時間、2ヶ月以上の平均が月80時間)
- 妊娠・出産・介護の制度利用を拒まれた、もしくは利用したことで不利益があった
- 常識的な配慮を行わず配置転換された
- 3年以上の有期労働契約が更新されなかった
- 更新される前提の有期労働契約が更新されなかった
- セクハラ・パワハラを受けた
- 退職勧奨を受けた
- 事業者による休業が3ヶ月続いた
- 事業者が法令に違反していた
【雇い止め】
- 有期労働契約が更新されなかった
会社都合退職になると、失業保険の給付日数と給付制限期間で優遇措置が受けられます。
自己都合退職なら失業保険を受け取るまでに2ヶ月(5年以内3回目の退職からは3ヶ月)の給付制限期間があるのですが、会社都合退職には給付制限期間がありません。
7日間の待期期間が終わればすぐに、失業保険の給付が受けられます。
また、会社都合退職だと失業保険の所定給付日数が増えます。
自己都合退職者なら最高で150日のところ、最大330日まで受給できるようになります。
さらに自治体によっては、会社都合退職者には国民健康保険料や住民税の減免制度を設けてるところもあります。
このように会社都合退職になると失業保険の面では様々なメリットがあるのです。
会社が会社都合退職にしたがらない理由
会社都合退職に当たる事例は多いのですが、実際のところは自己都合退職で処理されるケースも多いです。
会社は会社都合退職にするのを嫌がります。
なぜ会社都合退職にするのを避けるかというと、理由は次の3つです。
会社が会社都合退職を嫌がる理由
- 雇用関連助成金をもらえなくなる
- 解雇予告手当を支払うケースが出てくる
- 裁判で訴えられる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
雇用関連助成金をもらえなくなる
企業は労働者の雇用環境を守るため、国からさまざまな助成金を受給しています。
しかし多くの助成金の受給条件には、6ヶ月以内に会社都合退職を行っていないことが含まれています。
なぜなら会社都合退職は「労働者の待遇向上を図る」という助成金の意図に反するからです。
雇用関連助成金には以下のものがあります。
雇用関連助成金
- トライアル雇用助成金
- 労働移動支援助成金
- 中途採用等支援助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 地域雇用開発助成金
- 障害者雇用安定助成金
これらの助成金がもらえなくなるため、企業は会社都合退職にしたがらないのです。
解雇予告手当を支払うケースが出てくる
労働者を解雇するときは解雇日の30日前までに労働者へ通知しなければいけません。
しかしその通知を怠った場合は、労働者に解雇予告手当を支払う必要があります。
たとえば即日解雇すると、解雇予告期間に相当する30日分の賃金を支払う義務が発生します。
会社都合で解雇することは、企業に金銭の負担を強いるケースも出てくるのです。
裁判で訴えられる可能性がある
会社都合退職で辞めさせた場合、労働者が納得せずに裁判で訴えてくることも考えられます。
そこでセクハラやパワハラが発覚したら、会社のイメージも大きく損なわれるでしょう。
そういった訴訟のリスクを避けるためにも、会社は会社都合退職にしたがりません。
自己都合退職として処理されないために
会社都合退職にはデメリットがあるため、会社はできるだけ自己都合退職で処理しようとしてきます。
そもそも企業は相当の理由がなければ労働者を解雇できません。
不当な解雇をすると、裁判など様々なリスクが発生してしまいます。
そういったリスクを避けるためにも、労働者自身の意志で辞めたという形で自己都合退職にしてしまいたいのです。
しかし本当は自己都合退職にしなくてもよいケースもたくさんあります。
本人が自己都合退職だと思っていても、本当は会社都合退職になる場合もあるのです。
その場合、自己都合退職で処理されても後から会社都合退職に変えることも可能です。
会社都合退職を自己都合退職に変える方法は↓こちらの記事で詳しく解説してるので、参考にしてください。
関連記事特定受給資格者・特定理由離職者とは?自己都合を会社都合退職にする方法
会社都合退職は面接で不利になる?
会社都合退職には失業保険でのメリットがあるとはいえ、就職で不利にならないかを心配する人もいるでしょう。
会社都合退職だとバレると面接で「問題のある人」と思われてしまいそうですもんね。
でも、そこまで心配する必要はありません。
基本的に自己申告しない限り、転職先の会社に退職理由を知られることはありません。
正当な理由があるなら、履歴書には「会社都合により退職」と書いておけばOK。
あとは職務経歴書や面接で「業績悪化により事業所が廃止になったため」「大幅な人員削減が行われたため」といった理由を付け加えればいいでしょう。
本人に非がない理由であれば、それほど問題視はされません。
ただし「懲戒解雇」や「退職勧奨」を受けた場合は、「本人に問題があるのかな?」と思われることもあるでしょう。
懲戒解雇や退職勧奨による会社都合退職では、面接で言える正当な退職理由を考えておく必要はありますね。
転職先に会社都合退職がバレる原因
会社都合退職がバレるのが嫌だからといって、履歴書や職務経歴書に「一身上の都合で退職」と書いて自己都合退職を装うのはおすすめしません。
嘘の退職理由がバレてしまうと経歴詐称になるばかりか、内定取り消しになることもあるからです。
本当の退職理由は離職票や失業保険の履歴からもバレます。
離職票は本来就職先の企業に提出する義務はありませんが、退職理由を知るために企業が要求してくることもあります。
また、中にはリファレンスチェックとして前の会社に経歴照会する企業もあります。
よって会社都合退職であることは正直に履歴書に記入し、面接で正当な理由を説明するのがいいでしょう。
前向きな退職理由であれば、それほど不利にはならないと思います。
会社都合退職で辞める人は、不本意に辞めさせられたケースも多いと思います。
上手に理由を説明できるよう、しっかり対策を練って就職活動してくださいね。