
会社を辞めた後、再就職するか独立してフリーランスになるか迷ってる人は多いでしょう。
独立するといっても、思うように収入が入らないと怖いですよね。
そんなときに使ってほしいのが再就職手当です。
「えっ?独立開業したときも再就職手当をもらえるの?」と驚いた人もいるでしょう。
再就職手当は本来「早期に就職したときに受け取れる手当」なのですが、個人事業主・フリーランスが開業したときも受け取ることができるのです。

再就職手当があれば当面の資金ができるので、開業当初のお金がない期間を乗り切ることができます。
しかし受給には条件があります。この条件を守っていないと不正受給になるので注意が必要なんですよ。
というわけで、個人事業主・フリーランス・自営業が再就職手当を受給できる条件や申請方法を解説します。
安心して独立に踏み出すためにも、ぜひチェックしてください。
再就職手当とは?制度の基本をざっくり解説

再就職手当とは、早く就職が決まった人に余った失業保険の一部を支給する制度です。
早期就職した人がボーナスとして受け取れる「お祝い金」と言えます。
失業者の生活を支えつつ、新しい仕事にスムーズに移行してもらうための制度なんですね。
再就職手当は失業保険の支給残日数によって、基本手当日額の60%または70%が支給されます。
再就職手当の金額
- 失業保険の日数を3分の2以上残して就職した場合は、残りの失業保険の70%
- 失業保険の日数を3分の1以上残して就職した場合は、残りの失業保険の60%
たとえば失業保険の受給期間が90日の人が60日を残して再就職した場合、残った失業保険の70%が再就職手当として支給されます。
再就職手当については↓こちらの記事で詳しく解説してるので、参考にしてください。
関連記事再就職手当の金額・条件・申請方法まとめ 失業保険とどっちが得?
そして再就職手当における「就職」とは、会社に雇われることだけではありません。
フリーランスとして独立し、安定した収入が得られると判断されれば、就職扱いとなり受給対象になります。
つまり会社に戻らなくても、安定したビジネスをやっている証拠さえあれば、手当を受け取るチャンスがあるのです。
個人事業主が再就職手当をもらう条件とは

失業者が個人事業主やフリーランスとして独立開業した場合でも、再就職手当を受給できるケースがあります。
ただし、条件を満たしていることが大前提です。
個人事業主・フリーランスが再就職手当を受給するには、次の条件を満たす必要があります。
再就職手当の受給条件
- 失業保険を受給できる状態にある
- 給付制限期間が終了している
- 失業保険の支給残日数が3分の1以上残っている
- 開業届を出す前日までに失業認定を受けている
- 過去3年以内に再就職手当を受けていない
- 収入見込みがあり、事業の継続性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
失業保険を受給できる状態にある
再就職手当は失業保険(正確には求職者給付の基本手当)という制度の中の一部です。
そのため再就職手当を受けるには、失業保険の受給対象者でなければいけません。
失業保険を受給するには次の2つの条件を満たしておく必要があります。
失業保険の受給条件
- 雇用保険を一定期間以上納めていること
- 失業の状態にあること
まず雇用保険の加入期間です。
自己都合退職の場合、過去2年間で通算1年以上の雇用保険加入期間が必要です。
会社都合退職の場合は、過去1年間で通算6ヶ月以上の雇用保険加入期間が必要になります。

そして「失業の状態にあること」とは、働く意思があるにもかかわらず就職できない状態を指します。
つまり、最初から就職するつもりがなく独立を目指してる人は対象外ということです。
実際に開業していなくても、「開業の準備をしている」だけでも対象外です。
そのため、対象になるのは「独立という選択肢もあるけど、今は就職するつもりで就職活動している」というあいまいな状態の人だけになります。
給付制限期間が終了している
自己都合退職した場合、失業保険の受給は「7日間の待機期間」と「1ヶ月の給付制限期間」(5年以内3回目の退職からは3ヶ月間)が終わった後になります。
この給付制限期間の間に開業してしまうと、再就職手当の対象にはなりません。
失業保険の支給残日数が3分の1以上残っている
再就職手当を受けるには、失業保険の支給残日数が3分の1以上残っている必要があります。
残日数によって再就職手当の給付率も変わってきます。
開業届を出すタイミングが遅いと支給対象外になる可能性があるので注意しましょう。
失業認定を受けた後に開業届を出している
開業届を出すタイミングは非常に重要です。
出すのが早いと「すでに就職した」ことになり、失業保険の対象から外れてしまいます。
開業届を出すのはハローワークで求職申込みをした後にしましょう。
また、開業日の前日までには失業認定を受けておく必要があります。
過去3年以内に再就職手当を受けていない
再就職手当は一度受けると3年経たないと再受給できません。
ですので、過去3年以内に再就職手当ならびに常用就職支度手当を受けていないことも条件のひとつです。
収入見込みがあり、事業の継続性がある
個人事業主・フリーランスが再就職手当を受給できるかどうか、重要なポイントはここです。
再就職手当はハローワークから「収入見込みがあり、事業の継続性がある」と了承を受けないといけません。
実現性のない事業だと「手当欲しさに虚偽の報告をしているのでは?」と疑われてしまいます。
審査に通るには、営業実態があることや事業に計画性があることなどを証明しないといけません。
申請の流れで説明しますが、事業計画書や取引先との契約書など、事業の存在をアピールする書類が必要になってきます。
申請の流れと必要書類

個人事業主・フリーランスが再就職手当を申請する流れは以下になります。
再就職手当申請の流れ
- ハローワークへ開業の相談をする
- 税務署に開業届を提出する
- ハローワークで自営業開始の申告を行う
- 再就職手当の支給申請を行う
この順番を間違えないでください。
たとえばハローワークへ相談する前に開業してしまうと、失業保険が打ち切られて再就職手当ももらえなくなる可能性があります。
独立開業で再就職手当をもらう手順は、就職したときの流れと異なります。
以下で詳細を解説しているので、ひとつずつ丁寧に進めるようにしましょう。
①ハローワークへ開業の相談をする
まずはハローワークへ「開業しようと思っている」ことを相談しましょう。
この時点で「再就職手当を受給したい」ことや、申請の手続き・必要書類などを聞いておきましょう。
でも「開業します」と言うのは、ちょっと待ってください。
というのも、失業保険はルール上「開業の準備を始めた」段階で打ち切られます。
ここで「開業するつもりです」と言ってしまうと、その日で失業保険は支給停止になり、次の認定日で残りの失業保険が支払われて終了となるのです。

ですので、まだ失業保険を受給したいなら「開業しようか悩んでいる」と濁しておいた方が、失業保険は受給継続できます。
ただし再就職手当を受給するつもりなら、この時点で開業日を伝えておいてもいいでしょう。
失業保険はその日に打ち切りになりますが、再就職手当の判定日が明確になるメリットはあります。
②税務署に開業届を提出する
開業を決めたら税務署に開業届を提出しましょう。
開業届の記入は非常に簡単です。↓こちらの記事でも書き方を解説しています。
関連記事無職から個人事業主・自営業へ転身【開業届を出しました】
この日があなたの事業が始まった日、開業日となります。
再就職手当においては、開業日の支給残日数をもとに支給額が判定されます。
支給残日数が3分の1より少ないと対象から外れてしまうので、提出は遅くなりすぎないよう気をつけましょう。
③ハローワークで自営業開始の申告を行う
開業届を出したら、ハローワークで自営業を開始したむねを申告しましょう。
独立開業する人にとっては、これが「就職の届け出」と同じ意味になります。
就職の場合は採用証明書等を持参しますが、個人事業主・自営業の場合は開業届の控えを提出します。
必要書類
- 開業届の控え
申告をしたら再就職手当支給申請書を渡されるので、記入して後日提出する形になります。
④再就職手当の支給申請を行う
再就職手当支給申請書を記入したら、必要書類を持参して再就職手当の申請を行います。
申請期限は開業日の翌日から1ヶ月以内です。
必要書類
- 再就職手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- その他、ハローワークが求める書類
ハローワークが求める書類については、何が必要か相談の段階で聞いておきましょう。
一般的には事業の継続性と収入見込みを証明する書類が必要になります。
事業計画書や営業資料など、あらかじめ準備しておくようにしましょう。
ハローワークが求める書類の例
- 事業計画書(収益見込み・事業内容など)
- 営業資料(Webページ、SNS、名刺、チラシの写しなど)
- 収入見込みの証明(請求書・契約書・案件一覧など)
支給が決定されれば約1か月後に「就業促進手当支給決定通知書」が届きます。
「就業促進手当支給決定通知書」が届いてから一週間以内に、指定口座へ再就職手当の振込みが行われます。
再就職手当がもらえないケースとは

個人事業主・フリーランスが再就職手当をもらう際は、慎重に手続きをしましょう。
というのも、ちょっとしたミスで失業保険の対象から外れて不支給、最悪の場合には不正受給となるケースがあるからです。
まず、開業すると決めている人が失業保険をもらうのはNGです。
失業保険をもらうには「開業も選択肢にあるけど、メインは就職を目指して就職活動している状態」である必要があります。
まだ開業届を出していなくても、ビジネスに専念してしまうと「開業準備をしている」とみなされるので注意しましょう。
これまで副業としてやってきたビジネスで開業する場合も気をつけましょう。
失業期間もビジネスをやっていると、開業の申告をした際に「最初から独立するつもりだったのでは?」と疑われてしまいます。
失業期間はビジネスを短時間にとどめ、あくまで目指すのは「就職」としておくのがいいでしょう。
失業認定日に質問されたとき、回答に注意してください。
関連記事失業認定日って何するの?ハローワークの初回認定日の流れと注意点
また再就職手当を申請する際、収入見込みを示す資料が十分でないと「継続的に稼げる事業とは言えない」として不支給になってしまいます。
たとえばクラウドソーシングで独立するなら、ある程度の実績を積んで提示できるようにしておくといいでしょう。
再就職手当の審査はハローワークのさじ加減次第なので、あらかじめ何が必要かハローワークにしっかり聞いておくことも大切です。
個人事業主でも再就職手当は申請できる

このように再就職手当は、個人事業主・フリーランス・自営業でも受給することができます。
ただし申請にはコツが必要で、ちょっとしたミスで不支給になるケースもあります。
流れを踏まえて慎重に手続きをするのがいいでしょう。

独立という新しいチャレンジをする際、ネックにになるのが初期費用や生活費です。
最初はどうしても資金が不足しがちになるため、再就職手当で補充できるのはありがたいでしょう。
個人事業主・フリーランス・自営業も、うまく再就職手当を活用してください。



